やめることもまた、技術のうち
2026/02/04
お世話になります、島根県邑南町(おおなんちょう)の寺本果樹園の寺本直人です🧑🌾いつもありがとうございます!
今日は、冬の邑南町にしては珍しくよく晴れました!よく晴れた日の仕事終わりのご飯はなんであんなに美味しいんでしょうか??
さて、今日は「やめることもまた、技術のうち」についてお話しさせてください。
【お知らせ】
2025年産寺本果樹園のイチゴ、ご予約受付中です🍓
実は、寺本果樹園のイチオシはイチゴなんです!厳しい寒さと腰まで積もる豪雪を乗り越えたイチゴは、おいしさと香りがギュッと詰まって格別な味です✨
邑南町のお店や畑で、またオンラインでもお買い求めいただけます!
【こだわりの裏側にある『デッカい落とし穴』】
寺本果樹園の栽培の基本方針は、シンプルに「おいしくすること」です。
それに合わせて収量や効率や利益を考えますが、やっぱりまずは「おいしい」を考えます。
でも、この「おいしくする」っていうのが、当たり前だけどめちゃくちゃ難しいんです。
以前も書きましたが、現代農業には「収量を上げるマニュアル」や「見た目を良くするマニュアル」は山ほどあっても、「味を良くするマニュアル」はほぼ存在しません。
だから、自分たちで手探りで見つけるしかないんです。
いろいろ試していくうちに、
「なんとなくこの肥料が良さそうだぞ!」
「この管理をするとコクが出そうだぞ!」
というのが、少しずつ見えてきました。
そして、この「おいしい」こそが、寺本果樹園の第一の『こだわり』となりました!
でも危ない危ない。
こだわりの裏側には、『デッカい落とし穴』がありました。
【「こだわり」はお金がかかる】
気をつけなければならないポイント。
それは、『こだわりは費用がかかる』ということです。
一般的に、収量を上げるためには「化学肥料」を使うのが断然効率が良いです。安くて、即効性があって、しっかり効きます。
でも、味を深めるために僕たちが使っている「有機肥料」は、価格が高い割に、成分量は少ないんです。
わかりやすく、肥料の主食である「窒素(N)」(人間でいうお米とかパン!)で比べてみましょう。
・ 以前使っていた化学肥料
↪︎20L入り(窒素成分10%):約5,000円
・ 現在使っている有機肥料
↪︎20L入り(窒素成分7%):約12,500円
わかりますか?
有機肥料の方が成分が少ない(10%→7%)のに、価格は倍以上(5,000円→12,500円)なんです。
これを同じ窒素量に換算すると、有機肥料は化学肥料の“約3.5倍”のコストがかかる計算になります。
「ちょっとこだわって肥料を変えてみようかな」
という軽い気持ちで変えただけで、経費が3.5倍に跳ね上がる。これがこだわりの『デッカい落とし穴』です。
【こだわり=足し算と思っちゃう】
『デッカい落とし穴』の恐怖はまだまだこんなもんじゃないです。
”こだわり=足し算“だと思い込んでしまうことです。
「もっとおいしくしたい!」と思ってネットや本で調べると、魅力的な情報がたくさん出てきます。
「有機肥料をやるとおいしくなるらしいぞ!」
「アミノ酸肥料!これで決まった!!」
「リン酸がいいのか!骨粉という肥料がいいらしい?」
「カルシウムもしっかり効かせないとダメか!」
「炭水化物を吸収させると光合成の節約になる?」
「海水ミネラルがいいらしい!」
「海藻エキスも効くぞ!」
「腐植酸? フルボ酸? フミン酸?なんだそれ、良さそうじゃん!」
今の時代、情報は無限に出てきます。
そして厄介なことに、これらの情報は多分「本当」なんです。
理論的には合ってるし、僕も農大時代に「これらの要素は大事だ」と習いました。嘘じゃないんです。
『理論的』にはね。
【理論と現場】
“こだわり=足し算”だと思っちゃうと、「あれも足して、これも足して…」と、どんどん肥料の種類が増えていきます。
でも、理論と現実は違います。実験室と現場は違います。
僕も過去、いろいろやってみました。
「あれもこれも」といろいろ投入してみました。
その結果どうなったか?
「正直、何が効いているのかよくわからなくなった」んです笑
確かに味は良くなりました。お客さんの反応もいいです。
でも、「アミノ酸肥料が効いたのか? 海藻が効いたのか? それともただ天気が良かっただけなのか?」
因果関係が複雑すぎて、再現性がなくなってしまったんです。
さらに、肥料を根っこからあげるだけじゃなく、「葉っぱから吸わせる(葉面散布)」という方法もあります。
去年は週に1回、多い時は週に3回くらい、重たいタンクを背負って、あるいは機械を動かして、必死に葉っぱに肥料をかけていました。
これ、めちゃくちゃ大変なんです。
追加の肥料代がかかるのはもちろん、散布する手間、時間、機械のガソリン代。
そして何より、僕の体力が削られていく…。
【勇気ある“引き算”の決断】
そこで今年、僕は大きな決断をしました。
「やめよう」と。
足し算の暴走を止めて、勇気を持って”引き算“をすることにしました。
去年のデータを引っ張り出し、
「これは本当に必要か?」
「これは無くても味は変わらないんじゃないか?」
と、一つ一つ精査していきました。
その結果、
・あれこれ使っていた肥料は、基本的に3種類に絞る。あとは適宜必要なタイミングであげる
・週3回やっていた葉面散布は、月1回程度に激減させる。
ここまで削りました。
正直、怖かったです。「これで味が落ちたらどうしよう」と思いました。
でも、蓋を開けてみたらどうでしょう。
今年のイチゴ、「過去イチおいしい!」というお声をたくさんいただいています。
実際、僕たちが食べてみても、去年より味が良くなってる気がします。
“引き算”が上手くいった!!
【やめることもまた、技術のうち】
今回の経験で思いました。
「おいしくなるから!」「こだわりは大事だから!」
という大義名分のもと、追加の肥料や技術を「足し算」していくことは、実は誰にでもできます。お金と時間さえあれば。
でも、
「どの肥料をやめるか」
「どの作業を削るか」
という”引き算“を見極めることが、めちゃくちゃ大事だと気づきました。
無駄な肥料をあげまくって、経費がかさめば経営が傾きます。
かかった経費を価格に転嫁すれば、イチゴの値段が上がって、お客さんが買いにくくなってしまいます。
それでは「三方よし」にはなりません。
そして怖いことに、足し算を頑張っていると、「こだわってる僕、頑張ってる!」と自己満足に浸れてしまいます。
「頑張ってる!」という充実感は、結果の有無に関わらず「でも頑張ってるから!これは間違ってない!!」という免罪符になりかけてしまいます。
こだわりを追求する「足し算」は超大事。
でも、無駄を削ぎ落とす「引き算」も同じくらい大事。
寺本果樹園のイチゴは今、足し算の次のステージである“引き算”にたどり着いた気がします。
「やめる勇気」。
これを持つことも、プロの農家としての重要な責務だと学びました。
やめることもまた、技術のうち。
技術とは本当に多方面に伸びてて、やっぱり面白いなと思いました!一生学びが続きそうです😆
というわけで、「やめることもまた、技術のうち」というお話でした!
今日は、冬の邑南町にしては珍しくよく晴れました!よく晴れた日の仕事終わりのご飯はなんであんなに美味しいんでしょうか??
さて、今日は「やめることもまた、技術のうち」についてお話しさせてください。
【お知らせ】
2025年産寺本果樹園のイチゴ、ご予約受付中です🍓
実は、寺本果樹園のイチオシはイチゴなんです!厳しい寒さと腰まで積もる豪雪を乗り越えたイチゴは、おいしさと香りがギュッと詰まって格別な味です✨
邑南町のお店や畑で、またオンラインでもお買い求めいただけます!
【こだわりの裏側にある『デッカい落とし穴』】
寺本果樹園の栽培の基本方針は、シンプルに「おいしくすること」です。
それに合わせて収量や効率や利益を考えますが、やっぱりまずは「おいしい」を考えます。
でも、この「おいしくする」っていうのが、当たり前だけどめちゃくちゃ難しいんです。
以前も書きましたが、現代農業には「収量を上げるマニュアル」や「見た目を良くするマニュアル」は山ほどあっても、「味を良くするマニュアル」はほぼ存在しません。
だから、自分たちで手探りで見つけるしかないんです。
いろいろ試していくうちに、
「なんとなくこの肥料が良さそうだぞ!」
「この管理をするとコクが出そうだぞ!」
というのが、少しずつ見えてきました。
そして、この「おいしい」こそが、寺本果樹園の第一の『こだわり』となりました!
でも危ない危ない。
こだわりの裏側には、『デッカい落とし穴』がありました。
【「こだわり」はお金がかかる】
気をつけなければならないポイント。
それは、『こだわりは費用がかかる』ということです。
一般的に、収量を上げるためには「化学肥料」を使うのが断然効率が良いです。安くて、即効性があって、しっかり効きます。
でも、味を深めるために僕たちが使っている「有機肥料」は、価格が高い割に、成分量は少ないんです。
わかりやすく、肥料の主食である「窒素(N)」(人間でいうお米とかパン!)で比べてみましょう。
・ 以前使っていた化学肥料
↪︎20L入り(窒素成分10%):約5,000円
・ 現在使っている有機肥料
↪︎20L入り(窒素成分7%):約12,500円
わかりますか?
有機肥料の方が成分が少ない(10%→7%)のに、価格は倍以上(5,000円→12,500円)なんです。
これを同じ窒素量に換算すると、有機肥料は化学肥料の“約3.5倍”のコストがかかる計算になります。
「ちょっとこだわって肥料を変えてみようかな」
という軽い気持ちで変えただけで、経費が3.5倍に跳ね上がる。これがこだわりの『デッカい落とし穴』です。
【こだわり=足し算と思っちゃう】
『デッカい落とし穴』の恐怖はまだまだこんなもんじゃないです。
”こだわり=足し算“だと思い込んでしまうことです。
「もっとおいしくしたい!」と思ってネットや本で調べると、魅力的な情報がたくさん出てきます。
「有機肥料をやるとおいしくなるらしいぞ!」
「アミノ酸肥料!これで決まった!!」
「リン酸がいいのか!骨粉という肥料がいいらしい?」
「カルシウムもしっかり効かせないとダメか!」
「炭水化物を吸収させると光合成の節約になる?」
「海水ミネラルがいいらしい!」
「海藻エキスも効くぞ!」
「腐植酸? フルボ酸? フミン酸?なんだそれ、良さそうじゃん!」
今の時代、情報は無限に出てきます。
そして厄介なことに、これらの情報は多分「本当」なんです。
理論的には合ってるし、僕も農大時代に「これらの要素は大事だ」と習いました。嘘じゃないんです。
『理論的』にはね。
【理論と現場】
“こだわり=足し算”だと思っちゃうと、「あれも足して、これも足して…」と、どんどん肥料の種類が増えていきます。
でも、理論と現実は違います。実験室と現場は違います。
僕も過去、いろいろやってみました。
「あれもこれも」といろいろ投入してみました。
その結果どうなったか?
「正直、何が効いているのかよくわからなくなった」んです笑
確かに味は良くなりました。お客さんの反応もいいです。
でも、「アミノ酸肥料が効いたのか? 海藻が効いたのか? それともただ天気が良かっただけなのか?」
因果関係が複雑すぎて、再現性がなくなってしまったんです。
さらに、肥料を根っこからあげるだけじゃなく、「葉っぱから吸わせる(葉面散布)」という方法もあります。
去年は週に1回、多い時は週に3回くらい、重たいタンクを背負って、あるいは機械を動かして、必死に葉っぱに肥料をかけていました。
これ、めちゃくちゃ大変なんです。
追加の肥料代がかかるのはもちろん、散布する手間、時間、機械のガソリン代。
そして何より、僕の体力が削られていく…。
【勇気ある“引き算”の決断】
そこで今年、僕は大きな決断をしました。
「やめよう」と。
足し算の暴走を止めて、勇気を持って”引き算“をすることにしました。
去年のデータを引っ張り出し、
「これは本当に必要か?」
「これは無くても味は変わらないんじゃないか?」
と、一つ一つ精査していきました。
その結果、
・あれこれ使っていた肥料は、基本的に3種類に絞る。あとは適宜必要なタイミングであげる
・週3回やっていた葉面散布は、月1回程度に激減させる。
ここまで削りました。
正直、怖かったです。「これで味が落ちたらどうしよう」と思いました。
でも、蓋を開けてみたらどうでしょう。
今年のイチゴ、「過去イチおいしい!」というお声をたくさんいただいています。
実際、僕たちが食べてみても、去年より味が良くなってる気がします。
“引き算”が上手くいった!!
【やめることもまた、技術のうち】
今回の経験で思いました。
「おいしくなるから!」「こだわりは大事だから!」
という大義名分のもと、追加の肥料や技術を「足し算」していくことは、実は誰にでもできます。お金と時間さえあれば。
でも、
「どの肥料をやめるか」
「どの作業を削るか」
という”引き算“を見極めることが、めちゃくちゃ大事だと気づきました。
無駄な肥料をあげまくって、経費がかさめば経営が傾きます。
かかった経費を価格に転嫁すれば、イチゴの値段が上がって、お客さんが買いにくくなってしまいます。
それでは「三方よし」にはなりません。
そして怖いことに、足し算を頑張っていると、「こだわってる僕、頑張ってる!」と自己満足に浸れてしまいます。
「頑張ってる!」という充実感は、結果の有無に関わらず「でも頑張ってるから!これは間違ってない!!」という免罪符になりかけてしまいます。
こだわりを追求する「足し算」は超大事。
でも、無駄を削ぎ落とす「引き算」も同じくらい大事。
寺本果樹園のイチゴは今、足し算の次のステージである“引き算”にたどり着いた気がします。
「やめる勇気」。
これを持つことも、プロの農家としての重要な責務だと学びました。
やめることもまた、技術のうち。
技術とは本当に多方面に伸びてて、やっぱり面白いなと思いました!一生学びが続きそうです😆
というわけで、「やめることもまた、技術のうち」というお話でした!