【食べチョクアワード2025 総合3位&畜産部門1位】自然と人と声で育てる。ぷらいどらんどさん
自然の力を最大限に活かし、食べる人の健康と力を引き出す野菜とたまごを生産されているぷらいどらんどさん!
一人ひとりの自主性に寄り添い、自由に挑戦できる「伴走型の障害福祉」を実践しながら、農業を通じて誇りと自信を育まれています。共感と共生を大切にしたコミュニティ「ぷらいどらんど」を育て、地域活性化にも取り組まれている生産者さんです。このインタビューでは、杉本さんと黛さんにお話を伺いました。
長男が与えてくれた新しい挑戦
農業を始めたきっかけを教えてください。
杉本さん:「2008年に重度の障害を持つ長男が生まれました。それが農業を始めるきっかけでした。
農家をしていた祖父からの提案を受け、福祉施設を立ち上げる中で「障害者が障害を感じない経済社会」をどうつくるかを考えた末にたどり着きました。
現在もコンサルティングの仕事をしているのですが、規模の経済や生産性、効率性が重視される社会の限界を感じています。生産性が求められない世界こそが、多様な人が生きやすい社会なのではないかと考えたのです。」
黛さん:「僕は、一次産品の生産技術・事業開発を担う、ぷらいどふぁーむ株式会社の代表をしております。毎日畑を耕したり、ヤギの面倒を見たりですとか、牧歌的な仕事を担当しております。」
杉本さん:「彼も僕も農業のバックグラウンドはないんです。だからこそ『ど素人だからできる農業』『障害があるからこそできる農業』という発想で、失敗を重ねながらも一歩ずつ形にしてきました。6次産業化が可能で、人それぞれの役割が生まれる農業は、福祉と結びつくことで新しい価値を生み出せると確信し、「ぷらいどらんど」が誕生しました。」
自然の力を信じて引き出す農業
農業をするうえで大切にしていることはありますか?
杉本さん:「僕らが目指すのは、規模の拡大や効率化を追い求める農業ではありません。
自然を人の知識でコントロールするのではなく、自然の力を信じ、引き出す農業を大切にしています。
安心・安全であることはもちろん、食べる人が元気になり、心まで満たされるものを届けたい。その根底にあるのは、福祉施設として掲げる『人間開発』という考え方です。
働く人が成長し、誇りを持ち、次のステップへ進んでいけること。
農業は単なる作業ではなく、人の可能性を広げる場であるべきだと考えています。
また、活動は自分たちだけで完結させず、地域全体を巻き込んだコミュニティづくりを重視する。子どもから高齢者まで、多様な人が関わり、学び合える場を育てています。」

思わぬ反響があった卵の販売
食べチョクでの販売を始めたきっかけを教えてください。
杉本さん:「私たちの活動の根底にあるのは、地域の中で人と人がつながるコミュニティづくりです。ぷらいどらんどの取り組みは、私たちだけで完結するものではなく、地域の方々と一緒に支え合いながら育てていきたいと考えています。
黛さん:「その中で、鴨の飼育を検討したこともありました。障害のある仲間が育てた命を自ら手にかけることへの心理的・倫理的な負担を考え、殺生を伴わない選択をしました。生産効率よりも、人の気持ちに寄り添う判断を大切にしてきましたね。」
杉本さん:「鶏の飼育は2022年に始まり、同年9月から卵の販売をスタートしました。最初は学校やイベントで配るところからのスタートでしたが、食べチョクの大ファンのお客様に背中を押されて、「食べチョク」での販売へと広がっていったのです。
実際に販売をしてみると、レビューを通してお客様の声が直接届きます。味や品質だけでなく、私たちの想いや背景まで伝わっていることを実感でき、大きな手応えを感じています。」

温かい声でつながる思いやり
今回のテーマ「声の力」を感じたエピソードを教えてください。
杉本さん:「食べチョクを通じて届くお客様の声は、僕らにとって何よりの原動力です。
レビューを通して『一番美味しい』『安心して食べられる』といった言葉を受け取ることで、自分たちの感覚や取り組みが間違っていなかったと確信できました。
やがて声は、味や価格を超え、
『鶏さん、暑いけど大丈夫ですか?』
といった、生きものや作り手を思いやる言葉へと変わっていきます。
僕はこれが声の力だと思うのです。
お客様の言葉を現場に持ち帰り、鶏たちにも伝える。
『日本一の卵だよ』『ありがとうって言われたよ』
そう声をかけることで、生産現場の空気そのものが変わっていくと感じています。
卵アレルギーや化学物質過敏症の方から『この卵なら食べられた』という声や、卵を割った瞬間に『ありがとう』と自然に言葉が出たという感想。それら一つひとつが、生産者としての誇りと自信につながっています。」

結びに
自然を活かし、人を育て、声が循環するコミュニティを育むことを目指すぷらいどらんどさん。
運営を進めるなかで様々な葛藤や壁を感じながらも、『真に必要とされるものは何か』を問い続けています。 価格競争ではなく、プライドを持った農業で社会と向き合う姿勢を貫いていました。
2028年春の施設完成を目指し、卵だけでなく新たな加工品づくりにも挑戦する予定とのこと。関わる人すべてが誇りを持てる場所として、今後のぷらいどらんどさんのご活躍にも注目です!