乾いた土が満たされる時。40年の自然栽培が教えてくれる「目に見えない本当の贅沢」
2026/08/09
ひときわ日差しの強い日が続き、しばらくの間、水を止めて自然の力で乾かしていた田んぼ。

カラカラに乾いた土は白くなり、ところどころに大きな地割れが広がっていました。

そして今日、いよいよ待望の水を入れる日を迎えます。

ぐんぐんと水が広がり、乾いた土にしみ込んでいく様子を見ていると、田んぼ全体が「待っていました!」と歓喜の声を上げているかのように感じられます。

喉を潤した稲たちも、たっぷりと水を吸い上げて、また一歩、力強く成長してくれることでしょう。

土の中で静かに息づく、小さな命の物語

水が行き渡ると同時に、田んぼにはもう一つ、愛おしい光景が広がります。

これまで乾いた土の中で、じっとその瞬間を待っていたトンボの幼虫「ヤゴ」が、水の気配を感じ取ったように元気に動き始めました。

さらに、土の奥深くに潜んでいたジャンボタニシも姿を現し、嬉しそうに草を探して歩みを進めています。

田んぼは、人間や稲のためだけの場所ではありません。

命を育む豊穣な土

命を潤す澄んだ水

目に見えない無数の微生物たち

ヤゴやジャンボタニシをはじめとする多様な生き物たち

すべての命がこの場所で出会い、それぞれの役割を果たしながら循環しています。

私はこの自然の厳かで優しい営みを何よりも大切にしながら、無肥料・無農薬の「自然栽培」でお米と向き合っています。

人間が支配するのではなく、稲と対話する「間断冠水」

これからの水管理は「間断冠水(かんだんかんすい)」という工程に入ります。

水を入れて、土を育み、一度乾かす。

そして再び水を注ぎ、また乾かす——。

この丁寧な繰り返しのなかで大切なのは、人間がすべてをコントロールしようとしないことです。

毎日田んぼに立ち、稲の葉の色や立ち姿をよく観察し、土の呼吸を感じる。その時々に稲が求めている分だけ、必要な水をお裾分けしていく感覚です。

自然の声に耳を傾けるこの時間は、私にとっても心を整える至福のひとときでもあります。

本当に価値のあるものは、いつも目に見えないところにある

自然栽培を40年続けてきて、つくづく感じることがあります。

世の中にはさまざまな「豊かさ」がありますが、本当に価値あるもの、心を満たしてくれるものは、決して目に見える形あるものばかりではありません。

見えない土の中で育まれる、多様な命のグラデーション

水が田んぼを潤し、静かに命が目覚める美しさ

何十年、何百年と先人から受け継がれてきた生命力の強い種

そして、その恵みを感謝とともにいただく日々の豊かな暮らし

効率やスピードが求められる現代だからこそ、こうした「目に見えない本質の価値」に目を向けることこそが、真の豊かさにつながるのではないでしょうか。

稲さん。

今日はお腹いっぱい、美しい水を吸い込んでくださいね。

そして太陽の光を浴びて、元気に、力強く育ってください。

今年もたくさんの大粒のお米を実らせ、次の世代へとその尊い命をつないでいきましょう。

田んぼに息づく、すべての命に感謝を込めて。

本日も、ありがとうございます。

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