「導く」育事
2026/05/26
1 I 行き先を導く

五月の畑は、ぶどうたちの変化が、目に見えて大きくなる季節です。

畑に行くたびに、伸びる枝、増える葉、ふくらんでいく蕾。

伸びてきた新しい枝は、そのままにしておくと、思い思いの方向へ広がっていきます。

だから、少しだけ手を添えて、行き先を整える。

枝と枝のあいだに、ほんの少し余白をつくりながら、光が均等に届くように、やさしく枝を針金に固定していきます。

どの房にも、同じように光が当たるように。

そしててもうひとつ、小さな「きっかけ」を与える仕事があります。

2 I 成長を導く

ぶどう農家になる前、嫁である私は恥ずかしながらデラウェアやシャインマスカットのどのぶどうは、種ができない品種だと思っていました。

けれど実は、「ジベレリン」という植物ホルモンの液体をまだ小さな房に一房ずつ浸して、種ができないようにしています。この働きによって、ぶどうに「種ができた」と錯覚させ、次の成長へと進ませていくのです。

この合図を送るタイミングはとても重要で、早すぎても遅すぎても、思うような成長にはつながりません。

花粉の状態を見極めながら、「いまだ」という瞬間に、多くの人にお手伝いいただきながら数万房の蕾ひとつひとつに浸漬していきます。

その先の姿を大きく変える、大切な工程です。つけ忘れを防ぐため、ホルモン液には食紅を加えています。

3 I 赤く染まる風物詩

そのためこの季節になると、この地域では、手や顔、洋服が真っ赤な人たちが町にあふれます。
「ああ、今年もジベの季節がきたな」

そんなふうに感じる、この土地ならではの風物詩のひとつでもあります。

私たちができるのは、大きく変えることではなくて、ぶどうが、自分の力で育っていけるように、環境を整え、そっと導くこと。

ひと房のデラウェアができるまでには、
こうした時間が、いくつも重なっています。

その時間もふくめて、味わってもらえたらうれしいなと思いながら、今日もまた、育事に向き合っています。

この投稿をした生産者

山形県 東置賜郡高畠町

oboco grapes

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