「ぶどうって、花が咲くんですか?」
農園に訪れたお客様によく聞かれるこの言葉。
たしかに、食卓に並ぶつやつやの実からは、花の姿なんて想像しにくいかもしれません。
でも実は、あの甘くて小さな粒「デラウェア」にも、ちゃんと“花”があるんです。
一般的にイメージするような派手な花ではありません。真っ白で、直径数ミリほどの小さな花は、注意深く見ないと見逃してしまうほど。畑一面ふんわりと甘い香りに包まれます。アカシアのようなかしかに甘く澄んだ香りだと言われています。
でも、この小さな花こそが、これから数ヶ月かけて“果実”へと育っていく始まりの姿なのです。
房の数を減らしたり、形や房の大きさを整えたり、実を太らせるための作業が本格化し繁忙期に突入です。
デラウェアの花は、とてもデリケート。
雨や風が強いと、受粉がうまくいかなかったり、花が落ちてしまうこともあります。自然と向き合いながら、見守る日々です。
だからこそ私たちは、毎日天気と相談しながら畑に足を運び、一つひとつの花の様子を確かめながら、「ちゃんと実になってくれるかな」と心を寄せます。
私たちの屋号「oboco grapes(おぼこグレープス)」の“おぼこ”は、山形弁で“こども”を意味します。
ぶどうの花が咲くこの季節は、まさに「おぼこ」たちの成長が著しく変化する時期でもあります。
毎日畑を訪れるたびに大きくなる「おぼこ」たち
これから陽の光を浴び、雨風を乗り越えて、甘く育っていく…。
そんな子どもたちを見守るような気持ちで、私たちはこの小さな花たちと向き合っています。
デラウェアが皆さんのもとに届くのは、真夏の頃。
でも実は、その何ヶ月も前から、畑では静かに準備が始まっています。
小さな花が、たくさんの手と自然の力を借りて、甘い果実になるということ。
この“見えない時間”も、ぶどうの美味しさのひとつだと思うのです。
次回の成長もどうぞ楽しみにしていてくださいね。