【食べチョクアワード2025 総合2位&野菜部門1位】農業を「続けられる仕事」にする。SHONAI ROOTSさん
山形県庄内地方において、有機JAS認証を取得してベビーリーフを栽培しているSHONAI ROOTSさん。地域資源を活用し、環境負荷の低い持続可能な農業の実践をしていらっしゃる生産者さんです。今回は黒光さんにお話を伺いました。
衰退産業と言われる場所に植える希望の芽
野菜作りを始めたきっかけを教えてください。
2019年に母体となる(株)SHONAI(旧:ヤマガタデザイン株式会社)が、農業部門として株式会社NEWGREEN SUPPLY(旧:ヤマガタデザインアグリ株式会社)を立ち上げました。グループ会社が運営する「ショウナイホテル スイデンテラス」で提供する野菜を、自分たちで作ろうという構想がきっかけです。庄内地域の循環型資源を活用しながら、持続可能な農業を目指して有機栽培に取り組んできました。
僕自身(ご担当の黒光さん)はメーカー勤務からの転職で、2020年に農業の世界に飛び込みました。大学時代の同級生から「有機農業をやってみないか」と声をかけられたことがきっかけで、全く未知だった農業の世界へ足を踏み入れました。
衰退産業と見られがちな農業だからこそ、まだまだ可能性がある。さらに、持続可能な農業に取り組んでいる点も、大きな後押しになりましたね。

農業を“我慢の仕事”にしないために
農業をするうえで大切にしていることはありますか?
僕たちが農業に取り組む上で軸にしているのは、「食料安全保障」という視点です。
必要なときに、必要な分だけ、きちんと食べ物がある状態をつくること。そのための一つの選択が、輸入肥料に頼らない有機農業でした。
また、単に「美味しい野菜」を作るだけではなく、「安定的に出荷し続けること」、そして「働くメンバーが農業を楽しめる環境をつくること」も同じくらい大切にしています。
無理をせず、切り詰めすぎず、長く続けられる形で農業をする。そのバランス感覚こそが強みでもあります。

“顔の見える評価”が変えた農業との向き合い方
今回のテーマ「声の力」を感じたエピソードを教えてください。
EC事業を始め、「食べチョク」に出品したことで、初めて“食べてくれる人の顔”を意識するようになりました。レビューやメッセージは、今では欠かせない存在です。
ポジティブな声は、続けていくための大きなモチベーションに。一方で、ネガティブな声は、原因を冷静に振り返り、改善につなげるための大切なヒントだと受け止めています。
お客様とのやり取りで、特に印象に残っているものはありますか?
中でも印象に残っているのは、「いつも美味しいベビーリーフをありがとうございます」と書かれた直筆のはがき。それは、メンバー全員にとって「自分たちのやってきたことは間違っていなかった」と実感できる瞬間でした。
一方で、厳しいクレームを受けた経験もあります。その出来事を通して、3つの優先順位を徹底することにしたのです。

失敗から学んだ、プロとしての「譲れない線」
EC販売をする上で意識していることはありますか?
実は「食べチョク」を始めてから、最も精神的に堪えたのは、商品への虫の混入に関するクレームでした。
農業の現場では、どれだけ注意していても完全にゼロにすることが難しい場面があります。当時は、「この程度であれば問題にならないだろう」という判断が、結果的にお客様のクレームにつながりました。
その経験を通じて、改めて強く感じたのが、食品を扱う仕事の責任の重さでした。
お客様にとっては「届いた商品がすべて」であり、その背景にある事情は関係ありません。だからこそ私たちは、
「安全第一」
「お客様に迷惑をかけないこと」
「現場で働くメンバーの精神的負担を減らすこと」
この3つを、判断に迷ったときの明確な優先順位として定めました。
品質が基準に満たない場合には、たとえ出荷量が減ったとしても、「出荷しない」という判断をする。
それは単に品質を守るためだけでなく、クレーム対応によって現場のメンバーが消耗してしまう状況を防ぐためでもあります。
結果としてこの判断基準が定着したことで、品質のばらつきが減り、現場の判断もシンプルになりました。
お客様への誠実さと、現場の持続性の両立ができるようになったことが、今の「安定した高い品質」という私たちの強みにつながっていると感じています。

結びに
SHONAI ROOTSさんの農業は、「理想」だけでなく「現実」と丁寧に向き合う姿勢に支えられています。
安定した品質と出荷体制、メンバーが無理なく働ける環境、そしてお客様の声に真摯に耳を傾け続けることを念頭に、野菜づくりに取り組んでいます。
今後の目標は、リピート率と品質を維持しながら、異常気象にも対応できる、人に頼りすぎない栽培の仕組みづくりに挑戦すること。
「期待を裏切らないものを作り続ける」──その言葉通り、SHONAI ROOTSさんたちは今日も、食卓につながる畑に立ち続けています。