ちょっと気取って『ポンカンルネッサンス』 悪貨ならぬ悪果は良果を駆逐する
少し長くなりますが、お付き合いをお願いします。
消費者の方々はおいしいものを食べたいと思い、生産者は自慢の収穫物を届けたいと願います。例えば、ポンカン。5月に花が咲き、取り入れの12月まで作業に追われますが、ポンカンの場合は味を左右する大切な過程がその後にも続きます。完熟果であっても予措(果皮を少し乾燥させて品質を保持する)を施した後に一定温度と湿度の下で1ヶ月程の追熟をして、やっとポンカン特有の美味しさに辿り着きます。最良の状態で食べてもらいたいのは誰しも同じですが、幾つかの問題があります。その一つが市場価格です。他の果実も同様でしょうが、価格は出始めが高く、その後徐々に下降傾向になります。年に一度の収穫物だから高く買ってもらいたいのは人情。そこで、追熟不十分どころか、収穫の数日後にはコンテナのまま大型トラックに載せられてゆく光景も珍しくありません。これでは店先で美味しいポンカンを見つけるのは至難の業ですし、その評価も落ちます。生産者にとっては、年に3ヵ月程度しか使わない専用貯蔵庫を持つことは不経済かもしれませんし、収穫用コンテナから貯蔵用の木箱に移し替えたり、その重い木箱を棚に差し込むには相当な労力も要します。その挙げ句に、下落した価格が待っているという現実。ただ、木箱の中で1ヶ月ほど追熟した旬のポンカンは一味も二味も違うことは間違いありません。私たちは、コストカットと味落ちの悪循環を断ち、濃厚な味と芳香のポンカンの復権のため、手間を省かない栽培を心がけています。