新品種「サンシャインレッド」を全国へ──ツジファーム・辻さんの挑戦
山梨市万力にあるツジファームの辻さん。
甲府盆地の恵まれた気候と、代々受け継がれてきた土作りを基盤に、最高の味を届けようと日々ぶどう栽培に取り組んでいます。
元サラリーマンという異色の経歴を持つ辻さんが、なぜぶどうの世界に飛び込み、今回の「食べチョクぶどうグランプリ2025」にどのような想いを込めているのか。その情熱に迫ります。

サラリーマンからぶどう農家へ、植物への愛が導いた転身
ぶどう農家の道を選んだのは26歳のとき。
会社員として働いていましたが、「物を育てたり、面倒を見ることが好き」という自分の本質に気づき、父の営む農園を継ぐことを決意しました。
ツジファームがある万力地区は、笛吹フルーツ公園や「ほったらかし温泉」を望む景勝地であり、世界農業遺産に登録された峡東地域の一角。冬は寒く夏は暑いという寒暖差が、甘みのあるぶどうを育てます。

土への愛情と多品種への挑戦
ツジファームの根幹は「土作り」です。
有機堆肥や有機石灰、配合肥料を活用し、土壌の健康を第一に考えています。
さらに約4年前からは、ヨーロッパで使われている「VA菌根菌」という微生物を導入。ぶどうの鮮度保持に効果があるとされ、輸送時の品質保持にも期待されています。
辻さんは好奇心旺盛にさまざまな品種に挑戦しており、現在は13品種を販売。育成中の若木を含めると16〜18品種を栽培しています。
山梨オリジナル品種「サンシャインレッド」を全国へ
今回のグランプリ参加には、自身の栽培技術を試す狙いもありますが、何より「新品種『サンシャインレッド』を多くの人に知ってほしい」という強い想いがあります。
サンシャインレッドは山梨県が開発した新品種。
シャインマスカットとサニードルチェを掛け合わせて誕生し、「山梨県知事が推すほど味が優れている」と辻さんは語ります。
その特徴は、強い甘みにもかかわらず「さっぱりとした後味」と「華やかな香り」。爽やかなマスカット系の風味を持ち、シャインマスカットに続く“次世代のスター品種”として期待されています。
栽培は容易ではなく、直射日光を当てて色づきを促すために反射マルチを敷いたり、袋を一時的に外したりと手間がかかります。
それでも辻さんは「とにかく美味しいのは保証します」と力強く語ります。

気候変動の影響はぶどうにも
近年、猛暑などによる気候変動はぶどう栽培に大きな影響を与えています。
ツジファームでも、特に6月から7月上旬にかけての雨不足により、粒の大きさ(玉張り)が小さくなる問題や、着色不良(皮の色がきれいに出ない)といった影響を感じているといいます。
「今後は定期的な灌水や追肥が必要になるが、コスト上昇も避けられない」と辻さんは語ります。
今回の「ぶどうグランプリ」で、ツジファームの「サンシャインレッド」がどのような評価を得るのか、そしてこの新たな品種が日本のぶどう市場にどのような旋風を巻き起こすのか、9月の品評会にぜひご注目ください。