自然生態系模倣型農業という取り組み
森の中では人間が植物に肥料をあげたり農薬をまいたりはしていません。でも森の木々や草花は季節ごとに健やかな姿を私たちに見せてくれます。何故そのようなことが持続されているのか。
森の中を歩くとわかります。実は森の中では土を見ることはあまりありません。多くの場合、土の表面は落ち葉や枝、枯れた木々や、命を終えた動物や虫のむくろ。そういった「命だったもの」が折り重なっています。そしてそれらは土へと還ります。
では誰が土に還しているのでしょう?
答えは「微生物」。目に見えない小さな様々な命が落ち葉や枝「命だったもの」を食べ土に還していきます。それを私たちは「分解」と呼びます。そしてその分解の過程では様々な栄養素が生まれ、木々や草花は根からそれらを吸い上げ、太陽のエネルギーを使い光合成を行い健やかに育ちます。
「分解」によって生まれる栄養素。それらが植物や人間にとって有用なものであるとき私たちはそれを「発酵」と呼び、有害であれば「腐敗」と呼んでいます。
森の多くは「発酵」型の世界。そして人間もまた「発酵」型の世界の住人です。
ですからクルンノウエンでは自然界で延々と続いてきた「発酵」型の循環の世界を畑に再現します。野菜たちも森の木々や草花と同じ植物なのです。
自然を観察し、そこにある生態系の循環を理解し畑に再現(模倣)する農業。自然生態系模倣型農業をクルンノウエンは実践しています。
そうすると驚くほど野菜たちは健やかに美味しく育つのです。
地域で生まれる廃棄有機物をゴミにしない。アグロエコロジー、リジェネラティブの世界
自然界にある命が互いを「活かし(生かし)生かし(活かし)あう」仕組み。生物同士の有機的なつながり。そういった事を畑に再現することは、言い換えればそれは、環境の「保護」ではなく「再生」です。
実は今世界的な問題となっている土壌の「死」。このままいけば取り返しがつかなくなる。そんな瀬戸際に世界の農地は直面しています。
「保護」では間に合わない。「再生」が必須。
クルンノウエンでは美味しいお野菜の栽培は勿論ですが、農地を農地としてではなく農地を自然の一部として再生することにポイントを置いています。
それは森のような豊かな微生物の多様性の実現でもあります。
森の中では微生物にごはんを与えているのは木々です。枝や落ち葉、そこに集まる動物や虫たちのむくろ。木々が微生物のお母さん。
でも畑にはそのような木々はありません。
ですから私たち人間が森の木々に成り代わり枝や落ち葉に相当するものを畑に持ち込みます。
人間が畑の微生物たちにごはんをあげるわけです。
クルンノウエンではごはんとして
●菊池川流域で刈り取られる河川敷の草(納豆菌やミネラルが豊富)
●近所のキノコ屋さんからいただくシメジの廃菌床(キノコ菌や酵母菌がいっぱい)
●集落のため池周辺の草
●問題になっている放置竹林の竹チップ(乳酸菌がいっぱい)
こういったものを微生物たちに食べてもらう(発酵分解してもらう)ごはんとして土に漉き込んでいきます。この時ちょっとしたコツがありますがそれはまたの機会にご説明。
実はこれらは全てゴミとして産廃扱いとなるものばかりです。今までは行き場を失う産廃扱いだったものが、私たちにとっては宝の山です。
処分に困っている各業者様から頂いてきて微生物の力を借りて畑の土を豊かな状態にしていきます。発酵型の世界が生まれます。
そうやって整えた畑に種をまき、苗を植えお野菜を栽培しています。
いわゆる肥料や堆肥は化学、有機含めまったく購入しません。
必要ないのです。
自然界には「ゴミ」は存在しません。
「ゴミ」が存在するのは人間社会だけ。
自然界の仕組みに寄り添い生きればゴミは減り大地は豊かに再生していけるとクルンノウエンは確信しています。
サーキュラーエコノミーの実践
障害を持った方々の福祉施設、高齢者のグループホーム、幼稚園、小学校、高校、飲食店、通年放牧の牧場、野菜やお米の生産者、デザイナー、そういった様々な方々と連携し、小さい規模ではありますが様々な取り組みをクルンノウエンは行っています。
地域で生まれる廃棄有機物を微生物の力を借りて豊かな土づくりに活用し、お野菜を栽培。小学生や幼稚園児がお米栽培を体験し、高校生はSDG,sの学びのために栽培から販売までを体験し、収穫できたお野菜たちは地域の幼稚園で毎日使っていただき子供たちの身体を作っている。
障害を持たれた方々と畑で作物を栽培、飲食店と連携して収穫物を施設の方々が加工。地域の高齢者施設の利用者さん達の食事に使っていただく。
一つ一つは規模の小さい取り組みですが、生産から消費まで可能な限りゴミを出さず地域内で循環させる経済の在り方(サーキュラーエコノミー)が、自然界の有機的なつながりに即したあるべき姿だと信じています。
安心安全なものを栽培するだけではいけないと感じています。
生産者として自然を観察し、世の中を観察した時、今の私たちの営みには大小さまざまな矛盾、滞りが存在しています。
クルンノウエンはそういった一つ一つと丁寧に向き合う農園でありたいと日々思いながら畑で微生物のお世話をしての野菜の栽培をしています。
みんな楽しく
農園を開設して10年目になります。
自然界を観察して、命の仕組みを理解して、畑に再現して、お野菜を栽培して、その繰り返しで歩み続けてきた先に、本当に多くの方々に支えていただき、共に歩みながら今のクルンノウエンがあります。
お客様と言うよりも私は大切な仲間、友達だと感じています。
この多くの方々との笑顔でのつながりを支えてくれているのはやはりクルンノウエンで収穫できたお野菜です。
雑味が無くえぐみが無く甘さや旨味にあふれている。そういったシンプルに食べて「美味しい野菜」が収穫できているという事実がとてつもない説得力となって沢山の方々との繋がりを農園にもたらしてくれています。
これまでは地域の方々に食べていただくぐらいの生産量しかありませんでした。けどやっと栽培量が増えてきて今までよりも多くの方に食べていただける量を収穫できるようになりました。
ですので、もし興味を持っていただけたならクルンノウエンの微生物たちが育ててくれたお野菜を食べてみていただければ幸いです。