シェフ・バイヤー向け特別試食イベント|中村シェフの料理を通して出会う、佐賀の味
中村シェフの料理を通して、佐賀の食材の可能性を体感する――。
そんな特別な試食イベントが、シェフやバイヤーなど食に携わる方々を招いて開催されました。
この日集まったのは、日々メニュー開発や仕入れに向き合う“食のプロフェッショナル”たち。
ただ味わうだけの試食会ではなく、「なぜこの食材なのか」「どんな想いで作られているのか」を知り、新しい食材の取り扱いやメニューづくりのヒントにつなげることを目的とした一日です。
左:ささき農園、中:中村シェフ、右:とんぼ農園
料理を囲んで始まる、特別な時間
会場に並んだのは、中村シェフが手がけた佐賀の食材を使った料理。
今回は、さまざまな佐賀県産の食材を取り入れた5品が提供されました。
ただ食材や商品を並べて試食するのではなく、料理そのものを入り口に、食材の魅力をじっくり感じてもらうための時間です。
料理をきっかけに、佐賀の食材のストーリーがゆっくりと広がっていきました。

当日提供されたお料理
唐津自然薯のゼッポリーニ、太閤牛蒡
<シェフのコメント>
自然薯に青のりを加え混ぜて揚げただけ。仕上げに上から軽く塩を振るだけです。
ひと口目で感じたのは素材の力の強さでした。
自然薯を揚げただけで、「こんなにも存在感があるのか」それが第一印象です。
添えているのは、同じくささき農園さんの“太閤牛蒡”を使ったピューレ。
自然薯と太閤牛蒡についてとても熱く語っていただき、料理にする際はぜひ合わせたいと考えていました。ピューレは、牛蒡と水、そしてほんの少しの太白ごま油だけで仕上げています。ほとんど手を加えず、素材の味をそのまま引き出すような構成です。
フランス料理でありながら、あえて“足さない”。
素材の持つパワーを感じてもらう一皿にしました。
平目のカルパッチョ、絹鞘、八朔、独活、茗荷、バジル
・鮮魚 佐賀玄海漁協魚市場
<シェフのコメント>
今回、佐賀県の平目や鰆、ヒラスズキ、クエなど、さまざまな魚を使わせていただきました。
20年以上料理人として多くの魚を扱ってきましたが、仕入れ先というのはどうしてもある程度決まってきます。「ここがいい」と思える場所があると、そこで揃えるようになります。そんな中で、今回の出会いは、自分の中の選択肢を広げてくれるものでした。
今回のお料理では、平目は特に淡泊な魚なので、今回はあえて周りも淡い味わいでまとめました。淡泊だからこそ感じられる平目の美味しさ、また曖昧さの中にある滋味深い味わいとさわやかさを表現したいと思いました。
どの魚も非常に扱いやすく、焼いても素直においしい。さらに熟成させても味がしっかりとのびる、ポテンシャルの高い魚だと感じました。
トマト屋ファームえじま完熟大玉トマトのペンネアラビアータ
・ひばりトマト とまと屋ファーム江島
<シェフのコメント>
今回のトマトソースは、いわゆる一般的なトマトソースに比べてバランスが悪いです。悪いというのは、あえてトマトの酸味など元々の味を凝縮しただけのトマトソースとしています。
一般的には、もう少し甘味があり、にんにくや唐辛子などを効かせるかと思いますが、このトマトは煮詰めるだけですごい可能性があると思い、このような仕上げになっています。
ソースは煮詰め方を変えて二層にしています。
上のソースはしっかりと煮詰めてコクを出し、下のトマトはさっと火を入れるだけにして、みずみずしさを残しました。
派手な味ではありませんが、印象に残る。大人向けのトマトソースです。
みつせ鶏と蓮根のパイ包み、魂のほうれん草のソース
・みつせ鶏 みつせ鶏本舗
・蓮根 山口さんちの贈り物
・魂のほうれん草 とんぼ農園
<シェフのコメント>
今日のパイは、ほうれん草のソースをおいしく味わっていただくために、パイ自体はあえて淡泊な味わいにしています。
中には、蓮根やみつせ鶏、ほうれん草など、佐賀の食材を組み合わせて仕立てています。
ソース自体は、ほとんどがほうれん草です。
ほんの少しだけ、じゃがいもと新玉ねぎを加えて、コクとやさしい甘みを足しています。ほうれん草の滋味深い味をそのまま感じてもらえるようにしました。
ソースをたっぷり添え、パイと一緒に味わう――
そんな少し素朴で、どこか家庭的なフランス料理のイメージです。
きらびやかというより、ほっとする味わいに仕上げました。
いちごさんのパブロバ、ミルン牧場クリームライン牛乳とホワイトアスパラガスのアイスクリーム
<シェフのコメント>
正直に言うと、これまで白いイチゴにはあまり縁がありませんでした。
どこか「珍しさが先に立つものなのかな」と思っていた部分もあったんです。
でも、実際に使ってみて、その印象は大きく変わりました。
白いイチゴには、白いイチゴにしかない香りと味わいがありました。派手ではないけれど、じんわりと広がる滋味深さがあって、何より“春”を感じたんです。
今回はその印象を生かして、ホワイトアスパラガスのシンプルなアイスクリームと合わせています。
そしてもう一つの発見が牛乳です。
アイスクリームにはミルン牧場さんの牛乳を使っています。スタッフの“牛乳マニア”が強く推していた理由が、使ってみてよく分かりました。牛乳ひとつで、アイスクリームの印象がここまで変わるのかと実感しています。
野菜のアイスクリームという、どこか繊細な味わいをやさしく受け止めてくれる白いイチゴ。とても相性の良い組み合わせだと感じていますし、これからも使い続けていきたい食材です。
「なぜ、この食材なのか」— 生産の背景を知る
今回のイベントでは、生産者ご自身にもお話をしていただきました。
日々のこだわりや、これまで積み重ねてきた工夫、そして時には苦労についても率直に語ってくださり、会場の空気は一層引き締まりました。
「なぜ、この育て方をしているのか」
「どんな思いで、この品質を守り続けているのか」
その言葉には、数字やスペックだけでは伝わらない重みがありました。
料理人やバイヤーの方々も、真剣な表情で耳を傾けられていました。
食材は、単なる“素材”ではなく、人の手と時間、そして想いの積み重ねであること。
料理を味わい、生産者の話を聞くことで、その価値がより立体的に伝わる時間となりました。
左:とんぼ農園、右:ささき農園
一皿のその先へ。素材を知る試食会
料理を味わったあとには、食材そのものにも触れていただきました。
一皿として体験したあとに素材を手に取ることで、「この味はこうやって生まれているんだ」と、理解が深まっていくような時間になっていました。
味や香り、質感を確かめながら、
「素材そのものがとてもおいしい」「自分の店ならこう使えそう」
といった声も、あちこちで自然と生まれていきます。
その場では、生産者の方と直接言葉を交わす姿も多く見られました。
育て方やこだわりを聞きながら、参加者の中で、食材のイメージが少しずつ具体的なものになっていきます。
さらに今回は、気になった食材を持ち帰れるよう、サンプルも用意しました。
その場の体験だけで終わらず、それぞれの現場で「実際に使う」ことまでつながっていくような仕組みです。
料理を味わい、素材に触れ、生産者と話し、そして自分で試してみる。
そんな流れの中で、食材の魅力がゆっくりと輪郭を持っていく時間になっていました。

■ 実施概要
日時:2月16日(月)
場所:LA BONNE TABLE(ラ・ボンヌターブル)
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町2丁目3−1 コレド室町2 1F
参加者:シェフ・バイヤー等の食に携わる方々16名(招待制)
登壇生産者:ささき農園・とんぼ農園
実施内容:
・中村シェフによる食材および料理の解説
・特別アラカルトメニュー試食
・生産者による食材の特徴・こだわり紹介
・中村シェフ・生産者との交流
主催:公益財団法人佐賀県産業振興機構 さが県産品流通デザイン公社