ピーマンの生育適温は〜30℃ですが、近年夏の最高気温が40℃近くになることも珍しくありません。ピーマンは30℃を超えると生育が停滞してしまいます。夏野菜の代表的なピーマンといえど暑すぎるのは苦手なようです。
本州最北の青森県は冷涼な気候のため、暑くなった日本の夏のピーマン産地として適しています。一方で初夏と晩秋は気温が低いため、冷涼な気候に適した品種が求められます。
その土地の気候に合った品種を栽培することは、美味しい野菜の最も大切な条件の一つです。
ピーマンは低温に当たると変形しやすい品種もありますが、ピクシーは低温でも変形しづらく、ピーマン特有の苦味の成分が少ないことが報告されています。
そして肉厚なため食べ応えがあり、ピーマン好きにこそ食べてもらいたい品種です。
良い作物を作ろうと努力している農家はみなさん土づくりの中で土の微生物が大事だと言います。私も全くその通りだと思っており、緑肥を活用したり、有機肥料を使うことで微生物のエサとなる有機物を供給し微生物が活性化する環境を作る努力をしております。
しかし微生物は目に見えませんし、変化に気づくには長い時間が必要です。
目に見えないもの、それも大事なことですが、私はいま目の前にさまざまな生き物がいる状況を嬉しく思います。もちろん農家なので害虫より益虫を見るとテンション上がります(笑)。私が仲間だと思う生き物は蜘蛛、テントウムシ、カエル、ヒラタアブなどです。もちろん益虫がいるということは益虫のエサである害虫もセットでそこにいるということなのですが、できるだけ彼ら(益虫)に影響が出ないように、有機農薬のボルドー液とBT剤と呼ばれるものを中心に、化学農薬をどうしても使わなくてはいけない場合も食害した害虫のみに効果を発揮する農薬を選択し、畑の生態系ができるだけ壊れないように、結果的に農薬使用が少なくて済むように気を遣っています。もちろん草取りも手作業です汗
世の中の農業スタイルは大きく慣行農法と有機農法に分けられて、割合でいうと99%が慣行農法です。私は慣行農法で農業をスタートし、農薬や肥料の知識を得ることできましたし、同時に私の周りには有機農業をやっている仲間が多く、彼らと一緒に農業をやることで有機農法の技術を勉強する機会にも恵まれています。それぞれのやり方を知ることでどちらが良い悪いではなく、どちらにもメリット、デメリットがあるということを知ることができました。
慣行だろうが有機だろうが、目指すところは健全で美味しい農産物を生産することには変わらないはずですし、どちらのやり方でも最高に美味しい農産物を作っている農家が周りにいます。慣行だから有機だからと枠にとらわれず、それぞれの良いところを活用し、尚且つできるだけ環境負荷の少ない農業を目指すのが、自分のスタイルかなと思っております。
なぜ急にワインの話が出てくるのかと思われるかもしれませんが、ワインは自分が農業を志すきっかけとなった最大の要素であり、自分の目標である『農業を通した地域の価値向上』の一翼を担っています。ワインというと華やかで少し気張ったイメージを持つかもしれませんが、私の中でのワインはカジュアルで、尚且つ良い意味で泥臭いものです。ワインは葡萄からできますが、ワインの出来は大かた葡萄の出来で決まってしまいます。だから美味しいワインを作るためには、美味しい葡萄を作ることが不可欠なのです。それはまさに農業です。
私は日本ソムリエ協会のワインエキスパートという資格を持っております。だからというわけではありませんが、ワインをテイスティングするのと同じように野菜をテイスティングします。この野菜をこんなふうに調理したらこんなワインと合いそうだななんて、未熟ながらも一丁前に考えるのが楽しかったりするわけです。
ピーマンや他の作物を育てることで、違う視点からワインに対する気づきを得ることがありますし、ワインを通して食材である作物をみる視点も得られます。
この感覚を野菜作りにも大切に活かしていきたいと思います。
まあそんなカッコつけた話はともかく、野菜をかじりながら、コップでワインを飲む。
くらいのありふれた日常を送れれば幸せです。