阿波ツクヨミファームの投稿一覧

前回はリジェネラティブ農業がどうして注目されているのかというところでした。
温暖化や気候変動の良い悪いはおいておいて、単純な農業の大規模化(化学肥料や化学農薬の濫用、農業機械の大型化)は、持続的な社会に様々な課題を残しています。
他にも深掘りたいところはあるのですが、
今回はそもそもリジェネラティブ農業(不耕起栽培)で炭素は土壌に貯留できるのか?
というところです。

ツクヨミファームの土壌検査結果の画像を載せています。
地域が4つあり、神山町の3つの生産者と阿波市がツクヨミファームです。
土質は単純ですが、非火山灰土で4地点とも共通。
ちなみに日本の畑の半分近くは火山国らしく、火山灰土(黒ボク土)でできています。

作物は一般的には1つの畑に1つの作物を作るのが効率がいいと考えられています。
対して、ツクヨミファームは多品種という記載です。
これはリジェネラティブ農業のもう1つの特徴で、1つの畑で複数の植物を育てているという形です。
ツクヨミファームではもう1段複雑になっていて、畑の中には野菜が育っている台形とかかまぼこ状の山(畝)があり、
1つの畑にレタスの畝、ブロッコリーの畝、大根の畝、人参の畝という風に棲み分けているのが通常ですが、
ツクヨミファームの場合は、1つの畝にブロッコリーとレタス、大根、人参が育ってる形の多品種です。

特徴的な項目が、
全炭素、無機態炭素、有機態炭素で、土壌にどれだけ炭素が含まれているかとその内訳です。
3%以上あると良いとされ、神山町の生産者は2%強、神山町周辺農地の平均は1.7%前後です。
ツクヨミファームは3%強と堆肥(炭素源)などを土の中に混ぜ込む有機栽培よりも多くなっています。
ツクヨミファームと同じ阿波市周辺農地の平均は1.8%弱なので、耕さないことで4‰(0.4%)ではなく、2倍近くに増やす、貯留できていることが分かります。

漢字間違えていますが、腐植率も上回ることができています。
腐ると書いてても、アブナイものじゃなくて、有機物が分解された後の残りカスだと考えてもらえれば。
畑の色も黄色っぽかったり、白っぽかったりと様々ですが、黒い土ほど腐植が多く含まれています。
日本での黒い土=黒ボク土は九州や関東から北側、北海道に多く、日本の畑の半分近くを占め、
水はけも水持ちも良く、土が硬くないので、畝を作りやすいといった風に加工しやすく最高の物理性を持っています。
ただ、火山灰性での腐植なので単純にいいワケではなく。。。
これが日本の農業にとって悪魔的な相性だったわけですが、ここはまた長くなってしまうので別の機会に。

話を戻して、腐植の一種でフルボ酸、フミン酸なら化粧品やサプリメントに配合されたりもしているので、知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
5%以上あることが望ましいとされ、
腐植が多いと微生物の繁殖や、水はけがいいのに水持ちもいいといった土壌の不思議な状態、
「団粒化」を促すと同時に養分の流出を抑えたり、植物が吸収しやすいようにする働き、重金属などを吸着し、植物に吸収されにくくしたりと様々な役割を持っています。

pHも一般的な農業の様に石灰等を投入しないでも、腐植が急激な変化を緩和してくれるため、人為的に調整する必要なく理想値を維持することができています。
(7が中性で7より小さければ酸性、大きければアルカリ性。理想値は6〜6.5)

全窒素はおかしい^^;
C/N比(炭素と窒素の比率)を見れば、小数点の位置が間違っているのが分かりますが、有機栽培よりも少し少ない位。
なのに!
堆肥をすき込めば増える可給態窒素は、不耕起でも有機栽培に負けず劣らずなんです。
(可給態窒素は植物には直接利用されないと考えられてますが、微生物の働きで植物に利用される形態に変化できる有機性の窒素のこと。なので化学肥料の投入では増えません)

不思議な状態はまだ続きます。
土壌密度平均は1が中心で、1より大きくなれば水はけが悪く、粘土の様な土壌。
1より小さくなれば、水はけが良く、黒ボク土の様な土壌。
と思っていただいて、神山町の生産者さん、1.03、0.94、0.91、ツクヨミファームは0.85とかなり良くなっています。
でも、含水率や最大保水容量は変わらない。
水はけが良く、水持ちも良いということが分かります。
腐植以外の要因は耕さないことで、植物の根っこがそのまま残っていること。
役目を終えた根っこは微生物に分解され、根っこがあった場所は空洞となります。
この空洞を空気や水、新しい根っこが伝っていきます。
トラクターを使う必要がありません。
ちなみに阿波市周辺農地の平均は1.07、神山町周辺農地の平均は1.11。
黒ボク土だと0.6〜0.7台が多いかと思うので、かなり黒ボク土の様な物理性に近づいています。

とか何とかいっちゃって、内緒で化学肥料を使ってもそもそもこの数字を作りえないし、じゃあ内緒で耕して堆肥など混入させてるんじゃないの?
というのも全微生物数で分かります。
ツクヨミファームの数字は有機栽培の生産者さんより少ないです。
なぜなら不耕起だから、有機栽培の様に堆肥や有機物を混ぜ込むことで微生物が分解し増えるためのエサの供給も無いからです。
土壌中に堆肥や有機物を混ぜ込む環境変化がない上での自然な数字と言えます。
減農薬など適正な管理をされているところでよくあるパターンが、もう1桁少ない数100万、悪いと数10万、土壌消毒などやっているとゼロに近づいていきます。。。
BF値は糸状菌(主にカビなど)とそれ以外の菌の比率で、非常にバランスが良いと言えます。
植物に悪いイタズラをする主な菌が糸状菌(非常に有用な糸状菌ももちろんいます!)で1000を切ると連作障害など様々問題が噴出し始めます。

種蒔きや定植のタイミングが遅れて思った様に行かない時ももちろんありますが^^;
届いたお野菜が意外と大きかったりするので、本当に無肥料なのか?などお問い合わせをいただくこともありますが、
微生物の働きや環境を意図的にコントロールすることで、有機栽培に引けを取らない養分供給を行えているからです。
ある意味無肥料とは言えないレベルですが、化学肥料や有機肥料の様な人為的な供給は行なっておりませんm(_ _)m

といってもまだ最低限の管理で、まだまだ品質の向上余地があります。
ツクヨミファームは肥料を使ったり耕すことをしないで、周辺農地とは全く別物の土壌を狙って作り出すことができました。
人は自然に逆らうことはできませんが、自然をコントロールというか誘導というか、天災はもちろん抗いようがありませんが、植生をコントロールすることで意図した結果(土壌以外に生物多様性など)を導くことはできます。

現状は取り組んでいる生産者はほぼ皆無に等しいですが、リジェネラティブ農業は日本の農業の課題を根本的に解決できる大きな可能性があります。
どうしてリジェネラティブ農業が農業の課題を根本的に解決できるのか。
次回からは日本の農業の課題を深掘っていきたいと思います!
長々となりますが、引き続き何卒宜しくお願いいたしますーm(_ _)m
コメント(0)
温暖化が良い悪いは一旦置いといて、
環境に優しいと思われている農業は温室効果ガスの大きな排出源の一つで全体の1/4を占めています^^;

リジェネラティブ農業は気候変動やSDGz、ESG的な観点から注目されています。
その最大の理由は栽培上の特徴として不耕起栽培(トラクターなどを利用して耕さない)であることです。

2015年に開催された「気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)」で、フランス政府主導で4パーミルイニシアティブという土壌中の炭素を増やす「カーボンファーミング(炭素農業)」などの取り組みの普及を目指す活動が始まりました。

土壌は巨大な炭素の「貯蔵庫」です。
大気には約3兆トン、森林などの植生にはCO2に換算すると約2兆トン分になるとみられていますが、土壌にはその2倍以上の5.5兆~8.8兆トン(表土だけで約3兆トン)が存在しています。
4パーミルという数字は、現在、人が経済活動によって大気中に放出している炭素量から求められています。

全世界の土壌中にある炭素の量を、毎年0.4%ずつ増やすことができれば、人為的な活動による大気中への温室効果ガスの排出をチャラ!にできると考えられ、
日本を含む700以上の国や国際機関、農業団体、NGOなどが参加しています。

植物にとっての運動、光合成で植物に取り込まれた空気中の炭素(CO2)は、植物と微生物とのやり取りや、枯れることで、土壌中の生き物や微生物の働きで、炭素を含む様々な有機物に変わります。
この有機物によって、土壌はより豊かなものになるので、炭素は植物の成長や食料の確保に欠かせない存在といえます。
(特に近年の次世代的な有機栽培では重視されてます!)

んが、
植物の根や微生物が土壌中に貯め込んだ炭素が耕すことで結果的に大気中に放出される形となっています。
農業機械で大規模に耕やし、大量の水、化学肥料、化石燃料を使って、単一作物を大規模に栽培するようになると、確かに食糧増産に繋がりました。
大規模化し続ける農業は、既に農業機械の重量は恐竜クラス。
耕転に圧縮が加わります。
終わらなくなってしまうので、一旦端折らせていただいて
^^;

耕作面積の増加や途上国の生産性の向上などで、食糧危機の兆候も無く、実際、世界の穀物生産量は増加し続けていますが、現実として大規模化の弊害によって収穫量の減少に転じている農地も増えてきています。

国連食糧農業機関(FAO)によると、年間約500万haの耕地が新規に劣化しており、耕地の確保に新たな取り組みが採用されない限り、2050年の世界の1人当たり耕作可能地は、1960年の水準の1/4になると予測しています。

確実な研究結果として世界の畑の面積のうち16%は100年のうちに肥沃な表土30cmを失うというデータも出ています。
日本で30cmはまぁまぁ絶望的な厚みです。
1cmの厚みができるのに100年かかるのに、悪い傾向だと10年で1cm位平気でなくなります。
でもまだ日本は特別です。
世界の他の地域だと1cmの厚みが日本の10倍かかります^^;
(ここら辺もどこかで何故そうなのかを伝えますね)

次回は実際リジェネラティブ農業で本当に炭素が貯留できるのか?
をツクヨミファームの実際の土壌分析結果を見てみましょう!
コメント(0)
お世話になっております^^
阿波ツクヨミファームの芝橋です。

大寒も今週で終わり、立春に入ります。
立春は太陽の黄道上の動きを基準に決められる、二十四節気での春の始まりの起点、旧正月(春節)は月の満ち欠けを基準とした旧暦の1月1日で今年は2月10日(土)です。
旧暦に倣うと、直近では1月31日(水)までと、2月4日(日)〜2月9日(土)までが苗を植えるベストタイミングです^^
ちなみに種を蒔くベストタイミングは、2月11日(日)〜2月15日(木)、2月19日(月)〜2月23日(金)になります。

ツクヨミファームも可能な限りこのスケジュールに合わせて
います。
今は苗の定食と並行して、畝をできる限り高くする作業で、通路の土を畝の上に上げています。
畝はできる限りなだらかな蒲鉾状ではなく、崖の様に絶壁に。
その方が風が通ります。
畝をできる限り高くすることで排水性の改善、表面積が増えるので地温が上がりやすくなります。

前回ご案内したU-GAKUさんとのEnglishCampですが、早速お客様からお子様を滞在させたいとのことでご相談をいただきました^^
家にいるとiPadばかり見ちゃう、何か体験させたくて色々調べてみるけどなかなかのお値段。。。ということで、そのお客様は集客が本職ということから、ツクヨミファームオリジナルの国内留学プランを一緒につくることになりました!
ツクヨミファームでは世界中から集まる外国人が常時10〜20人がいる環境を提供できます。
どんな国からどんな人がやってくるかはこちら!

https://ritzy-touch-d10.notion.site/Schedule-of-Stay-6cf03859b8a84ec9b13522e693c8133c?pvs=4

ツクヨミファームは今年は農業の「拡張」を目指したいと思います!
こんな感じで今年はお客様と一緒に新しい農業をつくっていきたいと考えています^^
次回の投稿までにLINEのオープンチャットでコミュニティもつくります。
今回の国内留学以外でも、どんな小さなことでも何かしら関われそうなお客様がいらっしゃましたら是非是非お気軽にお声がけください^^
コメント(0)
コメント(0)
農業のことやツクヨミファームについてなど少しづつ深掘っていくコーナーです。
ツクヨミファームはリジェネラティブ農業に取り組んでいます。
余り聞きなれない言葉なので、リジェネラティブ農業とはなんぞや?というお客様もいらっしゃるかと思います。
まずは僕たちが取り組んでいるリジェネラティブ農業から深掘っていきますね!
regenerativeを直訳すると再生。
日本では環境再生型農業と呼ばれています。
その特徴は不耕起栽培。耕さない農業です。
不耕起栽培だけでみると、日本では家庭菜園を除き、まともに取り組んでいるのは各県片手で数えるほどでしょうか。
まだほとんど実践者がいない状況ですが、
趣旨は異なりますが、アメリカでは全農地の50%程が不耕起になってきており、ヨーロッパでは気候変動やSDGs、ESG的な観点からオーガニックのネクストスタンダードと目されています。
最近では、パタゴニアさん
https://www.patagonia.jp/regenerative-organic

Allbirdsさん
https://www.allbirds.jp/pages/regenerative-agriculture
といった大きな企業も提唱しており、オーガニック(有機栽培)には見られなかった積極的な動きも見られる様になってきました。
そんなリジェネラティブ農業ですが、そのルーツは日本にあります。
福岡正信という方が自然農法という栽培体系を確立しました。
戦後に生まれた栽培体系で実はそんなに歴史は古くはないのですが、当時は化学肥料や化学農薬も普及し、やればやる程作物が大きくなって、安定的に生産できるんです。
そちらの方がはるかにインパクトが大きかったので、国内では鳴かず飛ばず。。。
現実として福岡さんの栽培体系は計画性を持つことができませんから、業として成り立たせるには野菜ではかなり厳しいものがあります。
実際に自然農法も含める有機栽培の割合は全体の0.5%程です。
でもまぁそりゃあそうなります。
ある意味そのおかげで安定した食糧生産を実現し、人類は発展してきました。
福岡さんの栽培体系は緑化としてみると非常に優れており、アジアのノーベル賞と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞したり、晩年まで精力的に活動されていましたが、日本では知っている方も少ないのではないでしょうか?
ところが、著書が有機栽培で先行していたヨーロッパでヒット。
熱狂的な支持者が現れ、日本の自然農法はパーマカルチャー的な要素も加わり、海外の広い農地×畜産もフィットし、リジェネラティブ農業へと進化。
近年の背景から世界で注目される様になりました。
コメント(0)

この投稿をした生産者