寒さが育む、極上の甘み。冬を彩る群馬の「やよいひめ」と「下仁田ねぎ」

2025/12/12 更新

寒さが深まり、贈り物にも食卓にも "冬の味わい" を求める季節

群馬には、この時期こそ輝くふたつの旬があります。ひとつは、香り立つ甘さが魅力の群馬県産いちご。代表格の「やよいひめ」は、口に含んだ瞬間に広がる華やかな香りと、みずみずしさが特長です。寒暖差のある気候でじっくり育つため、糖度がのりやすく、ギフトとしても存在感があります。

もうひとつは、冬の名脇役として欠かせない「下仁田ねぎ」。太く短い独特の姿は、この土地で受け継がれてきた伝統栽培の証。鍋に入れると外側はとろり、中はほっくりと甘みが増し、「これがねぎ?」と驚くほど濃厚な味わいに変わります。煮ても焼いても主役級の存在感で、冬の料理に深いコクを添えてくれます。

いちごの甘さと下仁田ねぎの旨み。まったく異なる魅力をもつ二つの群馬の恵みは、贈り物にも、年末年始のごちそうにもよく似合います。寒い季節だからこそ味わいたい、群馬ならではの"旬の味"をぜひお楽しみください。

【目次】

山あいに息づく伝統――ながい農園さんが紡ぐ、本場・下仁田ねぎの物語

自分の原点に戻るように、一本のねぎと向き合う


「こういったインタビューは初めてで、少し緊張しています。」
そう語る ながい農園さん は、かつてエンジニアとして働いていた異色の経歴の持ち主です。

生家はねぎ農家。とはいえ、ご本人が就職した頃には栽培は途絶えていました。
ただ、家庭菜園規模で育てたねぎを友人へ送ると「こんなに美味しいの?」と驚かれることが続き、本場・下仁田ねぎの存在感を改めて実感したと言います。

「美味しいと言ってもらえるものを、自分の手でつくりたい」
そんな想いから、下仁田ねぎの栽培に一から挑む道を選びます。

受け継がれる伝統栽培――“夏に叩き起こす”理由

ながい農園さんが大切にしているのが、下仁田町に古くから伝わる独自の二度植えです。

通常、ねぎは春に一度苗を植えて終わりですが、下仁田では夏にもう一度植え替えます。本来休むべき季節に、あえて“叩き起こす”ように植え替える――極めてスパルタな方法です。

この負荷こそが唯一無二の味を生み、甘みととろみを引き出す鍵。
「大変だけれど、昔からこの土地が続けてきたやり方には理由があるんです。」
その言葉には、土地への敬意と伝統を守る誇りが滲んでいました。

山あいの気候が育てる、格別の甘さととろみ

下仁田ねぎは品種としてはどこでも育てられる――しかし本場の味になるのは、やはり下仁田だけ

山がちな地形で日陰が多く、寒暖差が激しい。
白い部分が短く“ずんぐりむっくり”とした独特の姿。
煮込めばとろりと甘く、糖度20度を超えることもある濃厚さ。

「甘さだけじゃなく、食感がとても大事。シャキシャキし過ぎると、この甘みと釣り合わないんです」
火が入ると舌の上でほどけるように変わり、鍋やすき焼きでは肉に負けずむしろ引き立て合う――これが本場の下仁田ねぎの醍醐味です。

料理の幅を広げる“主役級の野菜”

ながい農園さんはレシピ研究にも熱心です。おすすめは定番のすき焼きや鍋。さらに、鶏ももと輪切りねぎを焼き鳥のタレで炒める“おうち焼き鳥”、クリームシチューやグラタン、親子丼の玉ねぎ代わりにも相性抜群。

火を通せば何にでも寄り添いながら存在感を失わず、料理をひとつ格上げしてくれる――まさに“ブランド野菜”と呼ぶにふさわしい一本です。

若い力で未来へつなぐ、本場のねぎづくり

地域では農家の高齢化が進み、生産量は減少傾向にあります。
しかしここ数年、Uターンや地域おこし協力隊から新たな担い手が増え始め、ながい農園さんもその一人として技術を磨き続けています。

農林大学校で一年間研修し、防除や病気対策を体系的に学んだことも、大きな支えになっていると言います。「外の知識を積極的に取り入れながら、この土地の味を守っていきたい」と語ります。

“贈り物に選ばれるねぎ”を、心を込めて

ながい農園さんのねぎは、12月から出荷が本格化します。
お歳暮としての人気が高く、地元の“下仁田ねぎ祭り”では午前中で完売。
直売やSNSを通じて、全国から注文が届くようになりました。

ブランド野菜である下仁田ねぎは、スーパーでは出会えない“農園から買うべき味”。冬の食卓を豊かに彩る一本を、この季節にぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

ながい農園さんはこちら

春の光をすくう、苺屋たくみさんの“やよいひめ”

“育たない作物”に魅せられて──苺づくりとの出会い

前橋市で苺づくりを営む 苺屋たくみさん が農の道へ踏み出したのは、2019年のこと。もともと住宅メーカーに勤めながら家庭菜園を楽しみ、さまざまな野菜を育てていた中で、「苺だけは畑ではうまく育たない」。その“難しさ”に惹かれたことがすべての始まりでした。

独学で調べても調べても奥深い──。

次第に「苺のことをもっと知りたい」「いつか自分でなにかを始めたい」という思いが膨らみ、ある日、修行を求めて訪ねた農園で“これだ”と確信。その日のうちに会社へ退職を告げ、新しい人生が動き出しました。

“偶然の恵み”が重なる、理想のハウス環境

苺屋たくみさんのハウスが建つのは、かつて田んぼだった土地。


地中の水位が高く、適度に湿度が上がるためいちごの育成にとって理想的な環境が生まれます。さらに、前橋は晴天率が高く、湧き水や地下水が美しいことでも知られる地域。
「たまたま自分のところに良い環境が巡ってきた」と語るように、いちごづくりの舞台として申し分のない土地が整っていました。

とはいえ、環境だけでいちごは育ちません。夏場の病気対策、肥料の濃度、温度や水分管理──すべてを毎日細やかに整え続ける姿勢こそ、苺屋たくみさんの真骨頂。
「設定して終わり、ということはしません。毎日神経を使います」
その言葉に、一本一本の苗と向き合う誠実さが滲みます。

群馬を代表する「やよいひめ」──酸味が導く“もうひと口”

苺屋たくみさんが6種の品種の中でも、とくに力を注ぐのが やよいひめ。
群馬県の品評会で金賞を何度も受賞し、自身も「一番好き」と語る品種です。

やよいひめは“今流行り”の甘さ一辺倒の苺とは異なり、昔ながらの品種を背景にほんのりとした酸味を宿します。このわずかな酸が、甘みを引き立てながら、もうひと口、さらにもうひと口と手を伸ばしたくなる奥行きのある味わいを生みます。

「たくさん食べたくなる苺。それがやよいひめの魅力です」
どれだけ食べても飽きず、最後のひと粒まで美味しい。まさに“食べ続けたくなるいちご”として長く愛される理由がそこにあります。

ただし、やよいひめは病気に弱く、管理が極めてシビア。「手間をかけた分だけ、やっと美味しく育ってくれる苺」なのです。

やわらかい品種が多い中で、やよいひめは実がしっかりしているため全国へ届けやすいことも魅力。まさに、ていねいな育て方が味わいに直結する“職人の苺”と言えます。

苺屋たくみさんのいちごが、特別な理由

手間を惜しまない“毎日の管理”

田んぼ由来の湿度・清らかな水・晴天率の高さが生み出す理想の環境
熟練の職人技が必要なやよいひめを、あえて主力に据える挑戦
市場には流れず、産直でしか出会えない希少性

どの粒も凛と整い、宝石のように艶やか。
口に運ぶと、甘みと酸味の調和がふわりと広がり、思わず笑みがこぼれる──。

そんな一期一会の体験をお届けするのが、苺屋たくみさんのいちごです。

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