命と隣り合わせの果樹園。クマ被害の実情

2026/01/15 更新

山形県上山市の山手で、ラフランス・りんごを生産する長沼果樹園。母娘三人で切り盛りされています。
山の傾斜地にある果樹園は、昔からクマやサルなどの被害に遭いやすい地域でしたが、ここ数年でその状況は一変しました。

「昔は年に1回くらいクマが来る程度でした。しかし、ここ2、3年でクマの出没が頻繁になり、知恵をつけて罠(箱穴)に入らなくなったクマが人里の方まで降りてくるようになったのです。」

食べチョクでは、深刻化するクマ被害について、山形県上山市 長沼果樹園の長沼由紀さんに伺いました(取材時期:2025年11月)

過去最悪の被害状況。ラ・フランス約2トンを失う

今年のクマの被害は深刻でした。
「今年のラ・フランスの時期、約2トン、30本以上の洋梨が食べられてしまいました」と長沼さん。
「美味しくなってね」「色づいてね」と話しかけながら大事に作っている果実が、広い範囲で食べられてしまっている現状はショックも大きかったそうです。

「被害の規模が大きくなった背景には、クマの生態の変化があるのではないか」と長沼さんはいいます。
かつては子グマが2頭や3頭ついて歩く姿は聞いたことがなかったそうですが、近年は親グマが多くの子供を連れて行動しており、食べる量が「半端ではない」とのことです。
クマは美味しく育ったラフランスやりんごを収穫の直前に、まだ収穫時期ではない他の品種も含め畑の果物を次々と食べていくのです。


クマに食い荒らされたと思われるりんごの木 2025年11月撮影

「完璧」が求められる電気柵と、現場の切実な課題

長沼果樹園では、古くからサル対策として電気柵を設置してきました。
しかし、近年のクマの被害拡大により、電気柵の整備は必須となっています。

以前から地域でクマ捕獲のための罠を設置していたそうですが、クマが賢くなったのか、罠にかかることが少なくなってきたため、捕獲率の少なさから行政による追加の罠の設置がなく、人的被害がまだ出ていない地域においては、“自分の畑は自分で守る”として、完璧に整備することが強く求められる状況です。

長沼さんが畑を営む山際は急な傾斜地。女性3人での電気柵の設置や維持管理は重労働です。
雪で支柱が倒れたり、ツルやクモの巣が張ることで漏電してしまうため、年間を通して定期的な見回りと整備が必要です。
しかし、人手が少なく、収穫や消毒作業といった果樹の品質に関わる作業が最優先となります。

「春先の忙しい時期に、電気柵の補修や除草剤散布に数日を割くことはなかなかできません。手が回らないのが実情。そのため、美味しいラフランス、りんごを収穫するときにはクマが現れてしまって⋯ クマに食べられてしまったことで農業をやめる人も地域には増えています」と長沼さんは言います。

また、長沼さんは、果樹園の電気柵が完璧でないためにクマが人里に降りていった場合、その責任を自分が負わないといけないのではないか、という不安も感じていらっしゃいます。

「いつどこに潜んでいるかわからない状況の中で畑仕事をしているのは、本当に命と隣り合わせなのかなというふうに思うんですよね」。
そう長沼さんは言います。


女性3名で切り盛りしている長沼果樹園さんのりんごの木 2025年11月撮影

お客様の「美味しい」が、農園を続ける原動力

厳しい環境にある中でも、長沼果樹園を支えているのは、何よりもお客様からの声です。
長沼さんは、お客様からの直接的なフィードバックがやりがいに繋がることを知り、農業を継ぐことを決意されました。

長沼果樹園では、お母さまが「美味しいりんご」を見極める選別作業を一手に引き受けています。
長沼さんと妹さんは、肥料を自家製で作る土作りや、人工授粉に頼らないよう手間ひまをかけるなど、品質維持にこだわり続けています。

「求めて買ってくださるファンのお客様たちがいるかぎり、精一杯努力して、美味しい果物をお届けできたらいいなぁと思っています」。

収穫時期にクマの被害が出た際も、お客様から「心配していました」「本当に気をつけてね」といった温かい手紙や電話をいただくことが、何よりの励みになっているそうです。

長沼果樹園は、「誰にも迷惑をかけずに、自分の責任のもとで仕事をしなさい」という祖父の教えのもと、クマとの闘い、地域の協力体制の難しさなど、「敵だらけ」の環境の中でひたむきに果物を作り続けています。

未来につなげるために。長沼果樹園が望む支援

長沼さんが今、切実に望むのは、整備に必要な人手の確保です。

「電牧器などの機械の購入費用には助成金が出ることがありますが、日々の管理の方が大変です。」

収穫時期にクマが出てからの対策だけではなく、春先に果実を作るための一番忙しい時に、集中的に人手が入り、環境を整備する手助けがあれば、クマの被害リスクを減らすことにも繋がるかもしれません。

厳しい自然環境に立ち向かい、妥協のない高品質な果物を届け続ける長沼果樹園。お客様の「おいしい」という声が彼女たちの奮闘を照らす一筋の光になっています。
長沼果樹園のりんごやラ・フランスを味わうことが、この大切な果樹園と地域の未来を支えることに繋がるのです。

長沼果樹園さんの商品を「食べて応援」

現在サポートを行っている支援プログラム一覧

今回の支援プログラムに限らず、気候変動による収穫量減少や、台風や地震などの自然災害で被害を受けた生産者、物価高騰などの影響で経営環境が急激に悪化した生産者に対するサポートを行っています。

現在支援中の生産者商品を見る>

ホタテ・ナマコ食べて応援 プログラム

食べて応援プログラムを見る


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