命と隣り合わせの果樹園。クマ被害の実情

2026/03/18 更新

山形県上山市の山手で、ラフランス・りんごを生産する長沼果樹園。母娘三人で切り盛りされています。
山の傾斜地にある果樹園は、昔からクマやサルなどの被害に遭いやすい地域でしたが、ここ数年でその状況は一変しました。

「昔は年に1回くらいクマが来る程度でした。しかし、ここ2、3年でクマの出没が頻繁になり、知恵をつけて罠(箱穴)に入らなくなったクマが人里の方まで降りてくるようになったのです。」

食べチョクでは、深刻化するクマ被害について、山形県上山市 長沼果樹園の長沼由紀さんに伺いました(取材時期:2025年11月)

過去最悪の被害状況。ラ・フランス約2トンを失う

今年のクマの被害は深刻でした。
「今年のラ・フランスの時期、約2トン、30本以上の洋梨が食べられてしまいました」と長沼さん。
「美味しくなってね」「色づいてね」と話しかけながら大事に作っている果実が、広い範囲で食べられてしまっている現状はショックも大きかったそうです。

「被害の規模が大きくなった背景には、クマの生態の変化があるのではないか」と長沼さんはいいます。
かつては子グマが2頭や3頭ついて歩く姿は聞いたことがなかったそうですが、近年は親グマが多くの子供を連れて行動しており、食べる量が「半端ではない」とのことです。
クマは美味しく育ったラフランスやりんごを収穫の直前に、まだ収穫時期ではない他の品種も含め畑の果物を次々と食べていくのです。


クマに食い荒らされたと思われるりんごの木 2025年11月撮影

「完璧」が求められる電気柵と、現場の切実な課題

長沼果樹園では、古くからサル対策として電気柵を設置してきました。
しかし、近年のクマの被害拡大により、電気柵の整備は必須となっています。

以前から地域でクマ捕獲のための罠を設置していたそうですが、クマが賢くなったのか、罠にかかることが少なくなってきたため、捕獲率の少なさから行政による追加の罠の設置がなく、人的被害がまだ出ていない地域においては、“自分の畑は自分で守る”として、完璧に整備することが強く求められる状況です。

長沼さんが畑を営む山際は急な傾斜地。女性3人での電気柵の設置や維持管理は重労働です。
雪で支柱が倒れたり、ツルやクモの巣が張ることで漏電してしまうため、年間を通して定期的な見回りと整備が必要です。
しかし、人手が少なく、収穫や消毒作業といった果樹の品質に関わる作業が最優先となります。

「春先の忙しい時期に、電気柵の補修や除草剤散布に数日を割くことはなかなかできません。手が回らないのが実情。そのため、美味しいラフランス、りんごを収穫するときにはクマが現れてしまって⋯ クマに食べられてしまったことで農業をやめる人も地域には増えています」と長沼さんは言います。

また、長沼さんは、果樹園の電気柵が完璧でないためにクマが人里に降りていった場合、その責任を自分が負わないといけないのではないか、という不安も感じていらっしゃいます。

「いつどこに潜んでいるかわからない状況の中で畑仕事をしているのは、本当に命と隣り合わせなのかなというふうに思うんですよね」。
そう長沼さんは言います。


女性3名で切り盛りしている長沼果樹園さんのりんごの木 2025年11月撮影

お客様の「美味しい」が、農園を続ける原動力

厳しい環境にある中でも、長沼果樹園を支えているのは、何よりもお客様からの声です。
長沼さんは、お客様からの直接的なフィードバックがやりがいに繋がることを知り、農業を継ぐことを決意されました。

長沼果樹園では、お母さまが「美味しいりんご」を見極める選別作業を一手に引き受けています。
長沼さんと妹さんは、肥料を自家製で作る土作りや、人工授粉に頼らないよう手間ひまをかけるなど、品質維持にこだわり続けています。

「求めて買ってくださるファンのお客様たちがいるかぎり、精一杯努力して、美味しい果物をお届けできたらいいなぁと思っています」。

収穫時期にクマの被害が出た際も、お客様から「心配していました」「本当に気をつけてね」といった温かい手紙や電話をいただくことが、何よりの励みになっているそうです。

長沼果樹園は、「誰にも迷惑をかけずに、自分の責任のもとで仕事をしなさい」という祖父の教えのもと、クマとの闘い、地域の協力体制の難しさなど、「敵だらけ」の環境の中でひたむきに果物を作り続けています。

未来につなげるために。長沼果樹園が望む支援

長沼さんが今、切実に望むのは、整備に必要な人手の確保です。

「電牧器などの機械の購入費用には助成金が出ることがありますが、日々の管理の方が大変です。」

収穫時期にクマが出てからの対策だけではなく、春先に果実を作るための一番忙しい時に、集中的に人手が入り、環境を整備する手助けがあれば、クマの被害リスクを減らすことにも繋がるかもしれません。

厳しい自然環境に立ち向かい、妥協のない高品質な果物を届け続ける長沼果樹園。お客様の「おいしい」という声が彼女たちの奮闘を照らす一筋の光になっています。
長沼果樹園のりんごやラ・フランスを味わうことが、この大切な果樹園と地域の未来を支えることに繋がるのです。

長沼果樹園さんの商品を「食べて応援」

現在サポートを行っている支援プログラム一覧

今回の支援プログラムに限らず、気候変動による収穫量減少や、台風や地震などの自然災害で被害を受けた生産者、物価高騰などの影響で経営環境が急激に悪化した生産者に対するサポートを行っています。

現在支援中の生産者商品を見る>

ホタテ・ナマコ食べて応援 プログラム

食べて応援プログラムを見る


引き続き、最新の情報を収集し、食べチョクとして可能なかぎりサポートできるよう努めてまいります。
皆様のご支援、何卒宜しくお願いいたします。

最新のおすすめ特集記事

無洗米をおいしく炊く正しい水加減と吸水のコツ

無洗米をおいしく炊く正しい水加減と吸水のコツ

無洗米の炊き方は、普通のお米とは異なるポイントがいくつかあります。糠がすでに取り除かれているため、洗う手間が省ける便利さがある一方で、水加減や浸水時間の調整が成功のカギになります。本記事では、無洗米と普通のお米の違いから、失敗しない炊き方、保存方法まで、初心者でも自信を持って取り組める全ステップを詳しく解説します。正しい知識があれば、毎日おいしいご飯を家族に提供できるようになるでしょう。産直の無洗米をチェック無洗米と普通のお米の違い無洗米と普通のお米の大きな違いは、工場での加工の有無です。...

2026/04/01 公開

メスティンでの米の炊き方|失敗しない手順と火力調整

メスティンでの米の炊き方|失敗しない手順と火力調整

メスティンで米を炊く方法は、正しい手順と水加減を理解すれば、キャンプ初心者でも失敗を大幅に減らして成功させられます。しかし、焦げ付きや芯残り、ベチャベチャといった失敗は多くのキャンパーが経験するトラブルです。このガイドでは、浸水時間から火加減、蒸らしまでの全ステップを詳しく解説し、固形燃料とガスバーナーの選び方、季節や標高による調整方法も紹介します。失敗パターンを事前に把握することで、キャンプ場での安心感が生まれ、メスティン炊飯の成功体験があなたを待っています。産直のお米をチェックメスティ...

2026/04/01 公開

フライパンで米を炊く|火加減と水加減の完全マニュアル

フライパンで米を炊く|火加減と水加減の完全マニュアル

炊飯器がなくても、ご家庭のフライパンなら米をおいしく炊くことができます。一人暮らしやキッチンが狭い環境でも、正確な水加減と火加減さえマスターすれば、炊飯器と変わらないふっくらとしたご飯が20分程度で完成します。本記事では、初心者が失敗しないための詳しい手順、1合からの実践的なレシピ、よくある失敗パターンとその対処法をお伝えします。これを読み終わる頃には、自信を持ってフライパン調理に挑戦できるようになるでしょう。鮮度の高い米ほどフライパン調理での失敗が減ります。この記事では、最適な米選びのポ...

2026/04/01 公開

土鍋でご飯を美味しく炊く方法|基本から失敗対策まで

土鍋でご飯を美味しく炊く方法|基本から失敗対策まで

米を土鍋で炊くことは、炊飯器とは異なる火加減のコントロールが必要です。しかし、正確な手順と具体的な時間設定さえ知れば、初心者でも毎回失敗なく美味しく仕上げられます。土鍋は多孔質(目に見えないほど微細な穴を持つ素材)で遠赤外線(米全体に深くじっくり熱を伝える特殊な光)を放出するため、粒立ちが良く香り高いご飯が完成します。吹きこぼれや焦げ付き、水加減の失敗を避け、強火・中火・弱火の具体的な切り替えタイミングと各段階の正確な時間を押さえることで、毎回再現性のある美味しいご飯が食べられる生活が実現...

2026/04/01 公開

米がおいしく炊ける水の量|精米・新米・無洗米別

米がおいしく炊ける水の量|精米・新米・無洗米別

米を土鍋で炊くことは、炊飯器とは異なる火加減のコントロールが必要です。しかし、正確な手順と具体的な時間設定さえ知れば、初心者でも毎回失敗なく美味しく仕上げられます。土鍋は多孔質(目に見えないほど微細な穴を持つ素材)で遠赤外線(米全体に深くじっくり熱を伝える特殊な光)を放出するため、粒立ちが良く香り高いご飯が完成します。吹きこぼれや焦げ付き、水加減の失敗を避け、強火・中火・弱火の具体的な切り替えタイミングと各段階の正確な時間を押さえることで、毎回再現性のある美味しいご飯が食べられる生活が実現...

2026/04/01 公開

すべての特集記事をみる

この記事をシェアする

サイトトップにもどる